医療法人を設立する際には、法人の基本的なルールを定める定款または寄附行為を作成し、都道府県知事の認可を受ける必要があります。その中でも重要なのが「目的条項」です。目的条項は、その医療法人が何を目的として設立され、どのような業務を行う法人なのかを明確にする規定です。設立後の事業範囲にも関係するため、将来の事業計画まで考慮して作成することが重要です。
医療法人の目的条項とは
医療法人の目的条項とは、定款または寄附行為において、法人の設立目的や行う業務を定める部分をいいます。医療法第44条第2項では、医療法人を設立する者が定款または寄附行為に定めなければならない事項として、最初に「目的」を掲げています。
医療法人は、一般的な株式会社のように自由な事業を幅広く行える法人ではありません。病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院などの運営を中心とした法人であり、その業務範囲は医療法による制限を受けます。そのため、目的条項についても医療法人として認められる業務に沿って作成する必要があります。
定款と寄附行為の違い
医療法人には大きく分けて「社団」と「財団」があり、法人の形態によって基本規則となる書類が異なります。社団たる医療法人では「定款」、財団たる医療法人では「寄附行為」が法人運営の基本ルールとなります。
医療法第44条では、定款または寄附行為について、目的のほか、名称、開設する病院・診療所等の名称および開設場所、事務所の所在地、資産および会計、役員などに関する事項を定めることを求めています。したがって、目的条項は単なる形式的な文章ではなく、医療法人設立認可における重要な審査項目の一つです。
目的条項に記載する本来業務
医療法人は、病院、医師または歯科医師が常時勤務する診療所、介護老人保健施設、介護医療院の開設などを目的とする法人です。目的条項では、こうした法人の本来業務が分かるように記載することが基本となります。
実際の設立手続では、都道府県が公開している医療法人設立の手引きやモデル定款・モデル寄附行為などを確認しながら作成することが重要です。設立する施設が医科診療所なのか、歯科診療所なのか、病院なのかによっても内容が変わる可能性があります。法人の実態と目的条項の内容を一致させることがポイントです。
附帯業務を行う場合の注意点
医療法人は本来業務だけでなく、一定の条件のもとで附帯業務を行うことができます。医療法第42条では、医療関係者の養成・再教育、医学または歯学に関する研究所の設置、一定の保健衛生に関する業務、社会福祉事業、有料老人ホームの設置などが規定されています。
ただし、附帯業務だからといって自由に開始できるわけではありません。医療法上認められる業務であることに加え、原則として定款または寄附行為に必要な定めを置くことが重要です。設立後に新たな附帯業務を追加する場合には、定款・寄附行為の変更認可などが必要になることがあるため注意しましょう。
目的条項は将来の事業計画も考えて作成する
医療法人設立時には診療所だけを運営する予定でも、将来的に訪問看護や介護関連事業などへの展開を検討するケースがあります。しかし、将来行いたい事業だからという理由だけで、あらゆる事業を目的として自由に記載できるとは限りません。
一方、必要な業務が定款・寄附行為に定められていなければ、新規事業を開始する際に変更手続が必要となる場合があります。そのため、現在の事業内容だけでなく、中長期的な事業計画を整理したうえで目的条項を検討することが大切です。認可を担当する都道府県の運用も確認しておくと、設立後の手続をスムーズに進めやすくなります。
行政書士など専門家に相談するメリット
医療法人の設立認可では、目的条項だけを作成すればよいわけではありません。定款・寄附行為をはじめ、財産目録、事業計画、予算書、役員関係書類など、多数の書類を整え、都道府県との事前協議を経て申請を進めるのが一般的です。
行政書士など医療法人手続に詳しい専門家へ相談すれば、予定している事業が医療法人の本来業務・附帯業務として認められるかを整理しながら、定款や寄附行為の作成、設立認可申請を進めやすくなります。労務管理については社会保険労務士、税務については税理士など、設立後の運営も含めて各専門家と連携することも有効です。
まとめ
医療法人の目的条項は、法人が何のために設立され、どのような業務を行うのかを定める重要な規定です。医療法上、定款または寄附行為に記載しなければならない事項であり、設立認可だけでなく、その後に行える事業の範囲にも関係します。
特に附帯業務や将来的な事業拡大を予定している場合は、医療法上その業務が認められるか、定款・寄附行為への記載や変更認可が必要かを事前に確認することが重要です。医療法人の設立や目的変更は行政庁との調整を伴うことも多いため、医療法人手続に詳しい行政書士などの専門家に相談しながら進めると安心です。

