医療法人の設立を検討している医師・歯科医師の中には、「配偶者や子ども、兄弟などの親族だけで医療法人を設立できるのか」と疑問を持つ方も多いでしょう。
個人経営の診療所から法人化する場合、家族が受付や経理、経営管理を担当しているケースも珍しくありません。そのため、法人化後も親族を社員や役員にしたいというニーズがあります。
結論からいうと、親族が医療法人の構成員になること自体は可能です。ただし、誰を理事・監事・社員にするかについては、医療法上のルールや行政庁による審査を踏まえて慎重に決める必要があります。
目次
親族で医療法人を設立することは可能です
医療法人について、「親族は役員になれない」という一律の禁止規定があるわけではありません。そのため、院長の配偶者や子どもなどが理事や社員として医療法人に参加することは可能です。
ただし、医療法人は通常の家族経営会社とは性質が異なります。医療法では、原則として理事3人以上、監事1人以上を置くこととされており、理事については都道府県知事の認可を受ければ1人または2人とすることもできます。
また、医療法人が開設する病院や診療所などの管理者は、原則として理事に加えなければなりません。
したがって、「家族だから自由に役員を決められる」というものではなく、医療法や定款、所管行政庁の審査基準を確認しながら役員構成を検討する必要があります。
親族だけで役員を構成できるとは限りません
特に注意したいのが、監事の選任です。
監事には医療法人の業務や財産の状況を監査する役割があります。医療法上、監事はその医療法人の理事や職員を兼ねることができません。また、自治体の手引きや定款例などでは、親族関係や利害関係について具体的な基準が示されている場合があります。
そのため、「院長を理事長、配偶者と子どもを理事、別の親族を監事にすれば問題ない」と単純に判断するのは危険です。
設立予定地を管轄する都道府県等の最新の審査基準を確認し、監事としての独立性を確保できる人物を選任することが重要です。
「家族経営」と「株式会社」を同じように考えないことが大切です
よくある誤解は、医療法人を株式会社と同じように考えてしまうことです。
医療法人は、医療法に基づいて設立される法人であり、設立には主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事等の認可が必要です。単に家族で定款を作り、法務局で登記すれば成立するわけではありません。
また、社団医療法人では「社員」という言葉が使われますが、ここでいう社員は従業員という意味ではなく、社員総会で議決権を持つ法人の構成員を意味します。
「社員」「理事」「監事」「従業員」はそれぞれ立場や役割が異なるため、設立時には区別して考える必要があります。
実務では設立前の役員設計が重要です
医療法人の設立では、役員構成だけでなく、定款、財産目録、事業計画、予算、設立総会議事録など、多くの書類を準備します。
さらに、自治体によって申請スケジュールが決められている場合があります。例えば埼玉県では、2026年度の案内において予備審査から本申請、医療審議会への諮問、認可、設立登記という流れが設けられています。
「法人化したい月の直前に申請すればよい」と考えていると、予定していた時期に法人化できない可能性があります。
行政書士がサポートできること
医療法人設立では、親族をどのような立場で参加させるのかを最初に整理することが重要です。
行政書士は、医療法人設立認可申請に必要な書類作成をはじめ、社員・理事・監事の構成の整理、定款作成、設立スケジュールの確認、行政庁との事前相談などをサポートできます。
特に親族中心の法人を予定している場合は、申請書を作り始める前に役員構成が所管行政庁の基準に適合するか確認しておくことで、後から人選をやり直すリスクを抑えられます。
まとめ
医療法人を親族で設立することは可能ですが、「親族だけならどのような構成でも認められる」というわけではありません。
理事・監事・社員にはそれぞれ異なる役割があり、特に監事の独立性や親族関係については注意が必要です。また、医療法人の設立には都道府県知事等の認可が必要で、自治体ごとに申請時期や審査上の取扱いが異なることがあります。
家族を中心とした医療法人を検討している場合は、具体的な家族構成と「誰を理事・監事・社員にする予定なのか」を整理したうえで、所管行政庁や医療法人設立に詳しい行政書士へ早めに相談するとよいでしょう。

